ないてくれるな いとしいひとよ
※リクエストありがとうございました!
大坂で豊臣が滅びて幾年月が流れた。
その間に、徳川家康が死し、戦乱を駆け抜けた兵どもは姿を消しその功績を残すだけだ。
上杉の重臣前田慶次は本より放浪癖があったものの、大坂の戦いを終えた後はそれが一層頻度を増し、上杉の筆頭家老であり親友の直江兼続を苦笑させていた。主君の上杉景勝が何も言わないことをいいことに、ふらりと姿を消しては数ヶ月も帰らないことが多くなり、今では米沢にいるよりも旅をしている期間の方が長くなってしまっている。
慶次は時折、旅先から文を送ってくる。それは辿り着いた先の名産品を添えているときもあれば短い文で近況を綴っただけのものあった。
春の訪れとともに上杉に届けられた慶次からの文には、今、薩摩に逗留しているようだった。
遥か遠く九州へと、慶次が一つの場所にじっとしていられない理由を知る上杉主従は周囲がなんと言おうと慶次を縛り付けることはしなかった。彼の性分を良く理解しているからだけではない。
慶次は探している。それは大坂で散った最愛の人。
想いを伝え、伝えられたことはなかったが、未だ心から愛する人を。
その人は今も人々の記憶に新しい。
名を、真田幸村という。
慶次は当てもなく松風に寝そべり、街道を移動していた。
活気付く町を通り過ぎ、田畑の広がる村の近くを通れば、暖かな春の日差しの中、桑や鋤を握り土仕事に勤しむ人々の姿が目に入る。誰もが笑って暮らせる世を、嘗て日本を統べた男の言葉だった。
其のとき当たり前に隣にいた人はもういない。
幸村が大坂で死んだ、などと兼続は涙を零していたが、慶次はそれが信じられず、今もこうして幸村を探すかのように宛ても無く各地を飛び回っている。それがどんなに愚かしいことか、熱に浮かされたように幸村を探す慶次であったが時折我に返っては途方も無く立ち尽くすのだった。
ふと、茅葺屋根の大きな一軒家から大勢の子供たちが飛び出してきた。そして最後に奥のほうから手を引かれ現れたあれは、村の娘だろうか。少女達は唯一の大人の手を我先にと握りしめ、手にしていた毬のようなものを渡して一緒に遊ぼうと強請る。慶次の方からはその人の顔も表情も窺い知れなかったが、子供達の様子から随分慕われているのだと思った。ふと、米沢で子供達に手習いを教えはじめた親友を思い出して、小さく笑った。
その数日後、慶次は再びあの村の近くを通り過ぎた。
生憎今日は子供たちだけのようで、がっかりしている自分に慶次は些か驚く。ごろりと道端に仰向けになって寝転んでうとうととまどろみながら子供達のはしゃぐ声や、土を掻く音を耳に入れていた。
「先生が外で遊んでいなさいって!なにして遊ぶ?」
「まりつき!」
「もう、おうめはそればっかり!」
例の家屋の傍で少女達は毬をつきはじめた。
一方、慶次の意識は春の陽気に徐々に沈んでいく。其のときであった。
「ほら、おなかがすいたでしょう、おやつがあるからこちらへおいでなさい」
姿を現したのは先日の人で、少女達はその人を先生と呼んで抱きついた。
腰に届かないほどまだ小さな子供達の突進を受け止め、家の中へ入るように促す。
慶次は其の声に飛び起きた。
自分のよく知る、懐かしい声だった。
忘れたことなんてなかった。間違うはずがなかった。
自分に背を向けているその人のもとへ、慶次は走る。
「わぁ!きらきらだ!」
まりつきがしたいといった、一番小さな子供が先生の腕の中に収まりながら慶次を見上げて指を差した。
ほんとだ、きらきらだ、他の子供達もぽかんと口を開けて慶次を見上げる。
慶次が僅かに息を切らし止まったのと同時に、その人は子供を下ろしゆっくりと慶次を振り向く。
「ね!せんせい!きらきら!」
得意げに少女は飛び跳ねた。
慶次は驚きながらも表しきれないほどの喜びが体の中で大きくなっていくのがわかった。
生きていた。それだけで十分だった。
慶次の腕が伸ばされる。そして、頬に触れる。其の温かさにこれが幻では無いことを知る。
「・・・、幸村・・・っ!」
「けいじ、どの・・・」
未だ困惑する彼を慶次は抱き寄せ、骨が折れてしまうのではないかというほど、慶次は抱きしめ続けた。
三人の少女を含めた子供達はいろいろと慶次のことを聞きたがっていたが、日が暮れはじめると幸村に言われるがまま一人また一人と帰路についていった。すると残されるのは必然、慶次と幸村だけで。二人は数年ぶりに顔を見合わせ他愛も無いことを話していた。
慶次は上杉のこと、旅をしてきたことを面白おかしく伝えれば、幸村は鈴のなるように笑う。
「と、俺のことはこれくらいにして、今度はアンタのことをききたいねぇ、」
僅かばかりの酒を酌み交わしているうちに、空には月が昇っていた。
煌々と照らされる月闇の中で、幸村が緊張したように姿勢を組みなおし、慶次に向き直った。
「、秀頼様を連れ大坂から島津殿を頼り薩摩へと、そしてこの土地に移り住みました」
今は芦塚と名乗っております、と幸村は笑みをつくる。
真田の名は広く知れ渡っているために、そのような偽名を使うことになったのだろう。
夏の戦で見せた死にに行くものの目をしていた幸村が何故、と慶次が思ったのを、幸村はなんとなく悟ると顔を伏せ、吐露した。
「明石殿が、私に教えられたのです」
幸村の手元で遊ばれる、少量の酒が入った杯。
明かりを映す水面に懐かしむような眼差しを落とし、幸村は綴る。
「、明石殿が《後悔することがあるのならば貴方はまだ死んではいけない》そう、おっしゃったのです」
後悔なんてなかったはずだったのに、その言葉に私は貴方を思い出しました。
微笑みながら、幸村は続ける。
わたし、
「わたし、いきていてよかった」
花の綻ぶような、美しい笑みだった。
また、貴方に会えた。
頬を染めて、慶次に向けて届けられた言葉に慶次は幸村を抱きしめる。喜びは、言葉にならなかった。
逞しい腕に抱かれ、幸村は甘い声をあげる。
久しい身体の交わりは丁寧にしすぎるということは無く、慶次は殊更優しく指を這わせた。
首筋に何度も唇を落とし、吸い上げればその僅かな痛みも喜びに代わり、幸村は体を跳ねさせて緊張に詰めていた息を吐き出す。
食むように首筋から鎖骨を伝い胸に降りてくる舌先が、べろりと突起を押しつぶすように下から舐めあげれば幸村は息を呑み、そのまま甘噛みしてやれば女のように甲高い声をあげて首を左右に振り払う。伸びた髪がぱさりぱさりと床に打ち付けられた。
もう一方のそれも指先で押しつぶして摘みあげているうちに、両脚を広げ其の合間に密着させていた慶次の腹に触れるものがあった。
「これだけでかんじちまったのかい?」
揶揄するように笑って見せれば真っ赤になった幸村が目を開いて己の下腹部を見た。
じわりと目尻に滲む涙を舌先で掬い取って視線はそのまま、手だけを下肢に移動させ先走りでしとどに濡れる下帯をずらし、立ち上がりはじめている幸村の一物を掌で優しく撫ぜはじめた。
何度か手を上下に滑らせれば、幸村は羞恥に顔を両手で覆っていやいやと生娘のように縮こまってしまった。
けれど慶次は動きを止めることなく、幸村の後腔に指を這わせた。が、先走りは入り口を解すほどではなく、彼の心までもが長らく交わりを絶ってきたため些か性急になってしまった行為に萎縮しているのだとわかった。
「ゆきむら、なかないでくれ」
ぐすん、と鼻を啜る幸村を目の前に、優しくしてやるつもりだったのに、と己自身の不甲斐無さに呆れた。
ふるふると幸村は意思を持って首を横に振り涙を拭うと、上半身を起こす慶次に手を伸ばし、首に腕を回して抱きついた。
首筋に埋めた鼻梁に触れる髪にくすぐったい気持ちがして、なんだが幼子のように慶次は嬉しくなった。
「受け入れて、くれるか?」
はい、
幸村は擽ったそうに笑っていた。
慶次は自分の指を舐めては丁寧に後ろを解かすことを繰り返した。
ゆっくり慎重に差し込む指の深さを増やしていって中指と薬指をすっぽり咥えてしまえるほどになった頃に漸く内壁を擦り始める。
幸村の慶次の首に回していた腕に徐々に力が篭りはじめる。
気付けば、忙しなく小さく跳ねる腿にあわせて、幸村の瞳が熱を孕んだように虚ろに濡れそぼっていた。
「ぁ、ああっ・・・っ!」
慶次がある一点を強く擦りあげたとき、大袈裟なほど身体を腿を振るわせ強く抱きついた。
隆起していた幸村自身から白濁が飛び散り、淫猥に下肢を濡らす。ハァハァ、と息を切らすのにあわせて上下する腹部からその白濁を慶次は掬い取り、更に後腔を潤してやれば、くぐもった声をあげて幸村が身悶えした。
「幸村、」
慶次が幸村を呼べば、委細承知とばかりにふわりと幸村は微笑んだ答えた。
顕になった慶次の一物は既に荒々しく隆起しており、幸村の後ろの入り口に切っ先を宛がえば其の熱さに幸村は目を閉じた。
ズズ、と押し込まれるそれに、幸村は息を殺し堪えた。しかしそれでは駄目だと慶次は幸村の下唇を舐め、ゆっくり深く口付けした。
するとだらりと力が抜け、其の瞬間を見計らって慶次は勢いよく身を沈めた。
「ひ、ぁあああっ・・・!」
深々と慶次を飲み込み、離れた口許から涎を垂らして幸村は狂ったように身体を捻る。
衝撃に白濁をわずかばかり撒き散らし、慶次の腹をも汚す。慶次がゆさゆさと緩やかに掴んだ腰を揺さぶってやるとそれすら堪らないのか
抑えることも忘れた艶めいた声があがる。
「だめだ、ゆきむら、もう・・・っ」
「くぅ、ん、・・・あ、あ、・・・!」
持って行かれそうになるのを堪え、慶次が声を漏らす。
こくこくと幸村が頷いて。
「ゆき、・・・っ!」
「ひ、ぁああああああ!!」
「・・・っ、く・・・っ!」
慶次が放ち、放たれた熱い慶次の精に幸村が達した。
ぎゅうぎゅう締め付ける後腔内に残った白濁も吐き出してやる。
「幸村・・・」
慶次が身を起こすとだらりと幸村の腕が離れ、幸村が気を失っていることがわかった。
赤く染まった目元にもう一度口付けを落とし、慶次はそのまま幸村を抱いて自分も眠った。
腹を下すことになってしまうかもしれないが、其のときは謝ろうと高を括って。怒りで赤く染まる幸村も愛おしいから。
「ありがとう、いきていてくれて、」
おまけ。
ガララ、(入り口を開ける音)
くのいち「ゆっきむらさま〜!ただいまかえりました、よ・・・ん」
慶次「んあ?もう朝かい・・・?」
幸村「・・・ん、くのいち、か・・・すまない、ねすごし、」
くのいち「ぎゃあああああああ!!なんで、なんでぇえええ!?」
幸村「え?・・・あ、あ・・・///・・・け、慶次殿!」
慶次「ああ、わるいねぇ、昨日そのままにして寝ちまったんだっけ」
くのいち「鎌之助ぇええ!十蔵ぅうう!どういうことぉおお!?昨日の影共はあんた達でしょおお!?」
鎌之助「いや・・・でも、ほら、幸村さま嫌がってなかったし」
十蔵「恋人達の逢瀬を邪魔するとか・・・なぁ?」
くのいち「う〜!!うわぁああああん!」
「戦国無双の慶幸で大阪の陣幸村生存ルートで、どちらか告白→裏突入な幸せ小説」というリクエストです。イモ子さま、素敵なリクエストありがとうございました!
いかがでしたでしょうか・・・?(・・・返品いつでも承ります…)
書き上げてからはた、と気付いたんですが最初から慶幸ハッピーエンドに向けて書いているって初めてじゃないでしょうか・・・?(聞くな)
大坂後というのがまた創作意欲をむきむきとかきたててくれました(告白という告白になっていないかもしれませんが・・・)
楽しかったです裏。(笑
リクエスト、本当にありがとうございました。